インディオの聖像

 

立花隆著 写真:佐々木芳郎

 

 

 大航海時代」と言う名で世界史に登場し、世界の中心のようになるスペインとポルトガルが中南米で何をしたか、と言うお話は副題で、その後の中南米の中に「伝導村」という存在があり、それはイエズス会の活動によるものなのですが、その「伝導村」の存在がヨーロッパでは、トマス・モアのユートピアやルソーの「エミール」が書かれた要因であるという話です。

 

 ブラジルや、メキシコ・ペルーなど中南米の言語はスペイン語である(ポルトガル語はスペイン語と変わらない。理由は長くなるので別項で)という原因は、彼らが「大航海時代」これらの地を占領したからです。

 そして現地にいた人々のほとんどを奴隷として使役し、あるいは悪名高いエンコミエンダ制の中で殺し尽くしてしまうと、労働力がなくなったのでアフリカから黒人奴隷を「輸入」します。

 

 カリブ海も含め「黒人」が多いのはそのせいですが、奴隷商人として活躍したのはポルトガル人です。

 

 ただ、イエズス会だけはスペイン王室の庇護の元、理想の王国を作ろうとし、実際に作ったのが「伝導村」でした。

 

 これは私も知りませんでした。

 

 当時インディオと呼ばれていた人たちの凄惨な状況は「ラス・カサス」と言う神父が1542年に書いた「インディオの破壊についての簡潔な報告」という本に「これでもか」と言うほど書かれています。

 

 ポルトガル人が種子島に流れ着いたのは1543年でしたでしょうか?

 

ラス・カサスの本はヨーロッパ中に広がり国際問題となりました。スペインやポルトガルの没落や、今でも情熱の国と言うよりは何となく怖いイメージがあるとしたらそのせいです。

 

 彼は本国では評判が良くないようです。本当に立派な人が正当な評価を受けない」と言う典型みたいなものですが。

 

閑話休題

 この本にはたくさんの写真があります。素晴らしい芸術品がそこにあります。それを見るだけでも価値があると思います。

 

 立花さんは2021年に逝去されました。この本は写真家の佐々木さんが今年になって立花さんの原稿をまとめ、出版にこぎ着けられたようです